米NASDAQで評価額23億ドル越え Gogoroの創始者『ルー・シュエシェン』が語る 10年「成長のための損失なら、ちっとも怖くない」

『車を売る』という思考でGogoroの海外戦略を立ててはならない、

台湾の従来の価値観からルー・シュエセン(陸學森|以下「ルー」と称する)を観察してもいけない。

彼はこの10年は挑戦を続け、困難な時ほど前進してきた。

10年の期間を経て、ルーの創立したGogoroは世界のグローバルなユニコーンの一員となった。

台湾で初めて米国市場へ上場し、評価額が23億米ドルを超えるユニコーン企業となったのだ。(注:企業評価額が10億ドル 以上で、設立10年以内の非上場ベンチャー企業をユニコーンと呼ぶ)

10年、長い3650日の年月の中で、ルーは1日たりとも、『不可能だ』と思ったことはなかったという。

「私はいつでも、先にある光を見つめてきました」

長く暗いトンネルを抜けて光が見えたとき、ルーの表情は明るくリラックスしたものになった。

「やっと周りが、自分たちが何をしているのかわかってくれた。社員や仲間たちも10年をこの会社に費やしてくれた。彼らの家族もやっと会社ついてあれこれ聞いてくれるようになったよ。ユニコーン企業なの?本当に?ってね(笑)」

従業員の期待を抱えながら、この10年で台湾での電動バイクの地位を確立させてきた。台湾では10台の電動バイクのうち、9台以上がGogoroだと言われている。

台湾の産業創立プラットフォームの董事長である「黄日燦(ホワン・リーツァン)」は、「Gogoroは生活においても密着度のエコシステムだ。しかし、如何せん儲けが出ない」と言う。

同業者や株主の多くは「一体いつ利益を出してくれるんだ?」と聞きたくなるだろう。

どのようにして損失と向き合うかルー「産業の規模化は成功と同じ」

損失に関してルーは、「私は成長を選んできました。なぜなら成長とは産業を拡大すること。何よりも、ひとつのものが産業規模化できた時点で、それは成功と同じだからです」と話す。

「今後10年、市場を拡大するために、損失も耐え続ける必要がある、あなたはそのようにお考えですか?」という記者の質問に対しても、ルーは少しも戸惑うことなく

「その通りです!Amazonが何年損失を出してきたか知っていますか?私は損失が怖くありません、なぜ恐るのです?」と回答した。

「第一に、電動バイクの市場は必ず大きくなります。

第二に、電動車には既にテスラやNIO(中国の自動車会社)、XPeng Motors(中国の電気自動車メーカー)が進出していますが、電動バイクに関しては誰も気にかけていません(二輪車は四輪車と比べてもシェア率が80%もあると言われているのに、です)。

第三に、都市部の人口は増え続けます。電動バイクは主に都市部で発展し、電池交換をする必要が出てきます。

第四に、私たちは戦略パートナーと共にこれらの市場を目指すのです。」

ルーは、この台湾での10年で一定の成果は出た、次の10年は海外市場でシェアを伸ばすという。

電動バイクの領域において、市場の創造者であるルーは、

「消費者の誰も、当時はこのようなモデルができるとは想像もしていなかった。2015年には『電池交換ってどういうこと?』という状況であったのに、Gogoroの出現により元々あった環境、つまりハードウェアやエネルギーの使い方、基礎的なインフラ、支払いなどが一掃されたんだ」と語る。

ビルゲイツに「あなたは正しい」と言わしめた、ルーのイノベーションに対する洞察力

ルーのイノベーションに対する洞察力は、なんとマイクロソフトの創設者であるビルゲイツもお墨付きだそうだ。

2010年、ipodが世にで始めた頃、マイクロソフトで働いていたルーは、ビルゲイツにこの商品を見せるのが待ちきれなかったという。

「このデバイスはファイルを保存して音楽を再生できる。そして大容量でAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を備えている。PCに取って代わる可能性があります。」と。

その当時、ゲイツ氏は「製品は成功しないだろう」と鼻で笑った。

しかしその 1年半後、マイクロソフトのトレーニングチームのメンバーとして、ルーは20〜30人の同僚やGatesと定期的に昼食会を開く。

会議が終わり、ルーが料理を選ぶために食堂に並んでいたとき、ゲイツはルーに気づき足を止め「iPodについて、君が言ったことは正しかったよ」と言ったのだ。

このような鋭くクリエイティブな考え方は、この10年来、Gogoroのイメージブランディングにも数々の影響を及ぼしてきた。例えば、電池交換ステーションは必ず白で統一すべきで、扉はつけない、自動的にすぐに電池を取り出せるようにすべきだ、などだ。

ルーは、41万台の自動バイク所有者と、20万人のGoShare(Gogoro電動バイクのシェアリングサービス)のユーザーにサービスを提供するためには、2,100台の電池交換ステーションが必要になるが、これらの運営には80〜90名の人員がいれば事足りると、自信げに語る。

「もしこれがガソリンスタンドであれば、これよりも相当に多くの人の手がかかるだろう。これがGogoroのメリットであり、私たちが創り上げた電力交換システムと呼ばれる新しい機会なんだ」


ルーにとって、これらは決して偶然ではなく、長期間にわたって構想されてきた青写真でもある。

ルーは、「私は情熱的な人ですが、物事を実行するのには非常に慎重です」とGogoro発展の3ステップについて語った。

「第一に技術を確立させる、当初の構想を実現させます。第二に執行システム(電気地交換システム)を確立させ、市場にこれらの技術やビジネスモデルを認めてもらう。そして第三に、今までの経営の結果を持って株主を説得し、海外進出へ拡大の投資をするのです。」

10年の歴史を見ると、2018年の終わりから2019年の初旬にかけて、Gogoroの電動バイクは市場で特に高い注目を集め、39億ドル(米)の売上を記録したことにより、株主にもルーの創造的な商品、ビジネスモデル、技術が確立したことを意識させた。しかしその後は政府の助成金の調整も重なり、Gogoroは台湾での成長がボトルネックとなってきた。

Gogoroを爆発的に成長させたければ、より多くの資金を投入し、チームを拡大するしかない。

そこでGogoroは資金調達をしながら素早く上場できるSPAC(特別買収目的会社)へ参入し、世界最大のベンチャー企業向け株式市場であるNASDAQに当然のように上場した。

市場拡大のため、ルーは中国だけでなく、インドやそれ以前には韓国、日本、ドイツなど様々な国へ出向き、交渉の足跡を残してきた。それでも現在議論されているものよりも、失敗した数のほうがはるかに多かったという。

市場には当然のことながら充電システムに焦点を当てたライバルがいるが、ルーは戸惑うことも、間違う心配もせず「台北市を歩いてるときのように、ときに道に迷うこともあるが、見上げると方向がわかるんだ」という。

香港で生まれたアメリカ人のルーは、台湾に根を張り創業した。

台湾はGogoroを育てる地盤を与え、完璧なサプライチェーン、実験的な商業モデル、そして世界でますます活発になる持続可能なグリーンエネルギーを念頭に、今日に至るまで一歩一歩進んできた。

ルーは感慨深そうに、「毎日が大変で転んでしまいますが、見上げるとどこに行けばいいのかわかります。もちろん困難に直面しますが、困難に挑戦することには意義があります。日々起こりうる困難をどのように解決していくかで、チームはさらに特別になるんです」という。

過去10年を振り返り、ルーは少し自信を失ったように自問自答した。

「一番苦しくもあり楽しくもあるのは、私たちに他に学ぶ相手がいないことです。言い換えれば、問題に直面したときの標準解答を持ち合わせていません。では、問題に直面したとき、または考えついた答えに納得がいかない場合はどうすれば良いのでしょうか?」

「今、私たちには10人の核となるメンバーがいます。この10人はとにかく前向きで、聡明で、力強いのです。今では未来の不確定な挑戦にも『私たちはもう10年も訓練をしたんだ、答えられないもの、考えつかないことなんてない』と胸を張って言うことができます」

創立10年でGogoroはアメリカのNASDAQに上場した。創始者兼最高責任者のルー(一番左)は社員に
「これで終わりではなく、はじめの一歩にすぎない」と語る。(攝影/吳東岳)|引用:今周刊

ルーの創業哲学他人の「不可能」はチャンス

41歳になる年、ルーは宏達電(台湾電子大手のHTC社)を離れる。創業の道を進むなかで自分自身に「10年ごとに異なる『大きな出来事』を成し遂げる」と課してきた。

初めの10年で、ルーはGogoroのビジネスモデルを確立させ、NASDAQでユニコーンの一員となった。

次の10年における『大き出来事』は、Gogoroをアジア市場で展開することだという。

「ひとつの都市をより良いものにしたい。輸送、エネルギー、データが解決方法だ。私たちはこれを挑戦とはとらえておらず、機会だと考えている」。

ルーは自身が15歳の頃から、寝る前に行っている習慣があるという。どれだけ寝るのが遅くなっても、体が疲れていても、3つの問題を必ず頭の中に考えておき、「3つの問題をよく考えて答えを出してから、やっと眠りにつく」という。

10年を走り抜けた今、ビジネスを始めたいと思っている若者たちに対して、ルーは半ば冗談混じりに「寝る時間もお惜しみなさい」と笑った。自身は40歳になる前は、3時間しか眠らず、毎日高速で頭を回し、関心のある事業に専念していた、という。

Gogoroのチーフプロデューサーであるポン・ミンイー氏(彭明義)はルーを「常に非常に勤勉で、熱心な人」だと語る。「夜中に時々ルーから連絡が来ることがあるけど、それは人事のことであったり、策略であったり、商品のことであったり、エンジニアが彼にできないと話したことだったり、いつもとても熱心なんです」

「ルー式の成功学」とは何か。

ルーは真剣に3つのことを教えてくれた。

——第一に、問題の解答に『不可能』を使ってはいけない。なぜなら他の人にとっての『不可能』は、自分にとってのチャンスだからだ。

——第二に、もし自分よりも賢い人を見つけたら、その人に負けないように努力するんだ。もしチームの中で自分が一番賢いと気づいてしまったら、そこから離れろ。

——第三に、これは母親が以前私に話してくれたことなのだが、この世の中にはいろんな種類の人がいる。普通の人はただ機会を待ち、賢い人は機会を作る。でも自分の側にチャンスがあるのに、それを掴まず、見逃す人にだけはなるな。

尚騰汽車グループ(台湾ポルシェ販売店)のSEOであるウー・ルイホン(吳睿弘) はルーをこのように評価する「従来の台湾の価値観や基準で観てはいけない創業家だ」と。

ルーが辿ってきた道をみると、確かに彼はチャンスをしっかりと掴み、そしてチャンスを生み出す人だ。

電動バイクの歴史上に、ルーはきっとこのように名が刻まれるであろう。

——ルー・シュエシェン(陸學森)Gogoroの創業者、電動バイク電池交換システムの創業者、ドリーマーであり、実業家でもある、と。

Profile:陸學森(ルー・シュエシェン)

現職:Gogoro共同創始者、最高経営責任者(CEO)

経歴:Nikeデザインエンジニア

   Microsoft クリエイティブスーパバイザー

   HTC クリエイティブディレクター

学歴:ワシントン大学(アメリカ)工業エンジニア科

引用元:陸式心法 上那斯達克變23億美元獨角獸 Gogoro創立十年告白 陸學森:如果成長的代價是虧損,我不怕

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