
Techman Robot(達明機器人)とは
Techman Robot(達明機器人)の本社がある桃園市亀山の7階に足を踏み入れると、異なる角度で上下左右に動く、無数のロボットアームが目に入ります。これらのロボットアームは、72時間動かし続けて問題がないか確認する工場出荷前のテスト中であり、不具合が発生すると「保護観察」の対象になります。同テストに合格したアームだけが電子工場、半導体工場、自動車部品工場などに出荷されます。
2015年、Techman RobotはQuanta Storage(廣明光電)の「ロボティクス研究所」から独立しました。たった3年で、同社は、市場シェア第1位のデンマーク企業Universal Robotsに次ぐ、世界第2位の協働ロボット(Cobot)メーカーとなり、2024年9月には新興株式市場に上場しました。2024年、Techman Robotの売上高は前年比17.5%増の14.81億台湾ドル、純利益は前年比755%の増加となる9,377.5万台湾ドルと非常に良好な成績を収めています。
視覚を持つAI協働ロボットの誕生
Techman RobotのCOO黃識忠氏は「光ディスクドライブを生産する親会社のQuanta Storageは、インターネットの普及に伴い、市場の縮小という困難に直面した。そのため、2011年から発想を転換し、光ディスクドライブとコントロールや機械などの技術が共通するロボットアーム市場への参入を開始した」と話します。
当初、価格の安さを重視した製品を作ろうと考えていましたが、実現が難しいことに気づき、破壊的イノベーション戦略へと変更したそうです。
2013年、Techman Robotはコンピュータービジョン技術をアームロボットに統合する挑戦を始めました。2015年には、コンピュータービジョンを持つ初のロボットアームを発表しています。
例えば、製造業でよくある自動ネジ締め作業ですが、単純な作業でありながら、エラーが発生しやすく、ネジが正常に固定されていなかったり、落ちたりすることがあります。コンピュータービジョンを持つロボットアームは視覚があるようなものなので、作業中のエラーを防げ、製品ごとに設定し直す必要がありません。

視覚を持つロボットアームは、大量の画像データを取得でき、Techman RobotにとってAI分野への参入に向けた重要な一歩です。Techman Robotは2017年、AIへの投資を開始し、ロボットアームが撮影した写真はサーバーに送られ、AIモデルのトレーニングを実行した後、ロボットアームにその結果を送信します。ロボットアームは受け取った結果をもとに、アクションを実行します。
ChatGPTが誕生した2022年、Techman RobotはAIのトレンドが明確になったと見て、協働型ロボットアーム製品を「AIコボット」と再定義し、すべての製品にAIを統合しただけではなく、AIが協働型ロボットにもたらす新たな可能性を探求するための「AI製品部門」を設立しました。
「AI 2.0」の時代に入った今、Techman Robotは、トレーニング済みの大規模言語モデルなど、すぐに使用できるAIモデルを顧客に提供するなどして、より使いやすくする工夫をしています。
一方、研究開発チームは、話すだけでロボットアームを制御する方法を模索しています。ロボットアームに与えた口頭指示は、言語モデルを介して多くのサブタスクに分割され、ターゲットオブジェクトを識別した後、アクションを決定しますが、将来的な実用化に向けて研究が続けられています。

AI 協働型ロボットアームの台頭
Techman Robotのインテリジェントロボットアームの顧客は、電子機器組立、半導体、自動車、食品加工など多岐にわたります。
アシスタントマネージャーである陳松瑞氏は、「年間20万台の車両を生産する自動車メーカーでは、出荷されるまでに、車体の外観、内装、エンジンルーム、タイヤ、ヘッドライトなど100項目ほどのテストを実施する。Techman Robotは、テストのためにトンネル型の検査室をゼロから構築し、4~5本のロボットアームが行うマルチアングル撮影により、車両の検査・分析を100秒以内で完了できる。これにより、精度と効率が良くなるだけではなく、従来の手作業による検査で生じていた疲労による誤判断の問題が改善された」と顧客の例を挙げました。
Techman Robotの AI 協働型ロボットアームは、製造業以外でも革新的な用途で使われています。
黄忠賢氏は、日本のレストランではラーメンやたこ焼きを作ったり、フライドポテトを揚げたりするためにロボットアームを使用しているという例を挙げています。シンガポールの企業は、コーヒーを作るロボットアームを、華やかな照明とスクリーンがある利用者の多い駅に設置し、通行人の注目を効果的に集める広告塔のような使い方をしています。
Techman Robotの今後の展望について、「ハードウェアの面では、より大きく、より負荷をかけられるロボットアームの開発を継続し、ソフトウェアの面では、使いやすさを向上させるとともに、言葉で指示を理解できるようという長期的な目標に向けて進んでいく」と黃識忠氏は話します。
近年注目を集めているヒューマノイドロボットの応用に関して、Techman Robotは慎重な姿勢を保っています。
黃識忠氏は、「人間型であることが必ずしも良いとは言えない。工場では、ロボットは足より車輪付きの方が適している。現在の技術では、ヒューマノイドロボットが立ち上がる時はエネルギーを絶えず消費するため、バッテリーは数時間ほどしか持たず、長時間使用できない」と話します。

「ヒューマノイドロボットの実現にはまだ遠いため、ハードウェアに焦点を当てるのではなく、どのようなソフトウェア機能が必要になるかに焦点を当てるべきだ」と黃識忠氏は話しています。 Techman Robotはヒューマノイドロボットの動向を注視し、製品化の機会を探っていきます。
引用元:https://www.bnext.com.tw/article/82765/techman-robot-ai