PXマートの代表「Lin Minxiong(林敏雄)」3年ぶりの買収により、RT-Martの95.97%の株式を取得した。当初、2つの量販店がPXマートと買収について協議していたという。
なぜ「Lin Minxiong(林敏雄)」はRT-Martの買収を選択したのか。未来のPXマートの最大の競争相手は一体誰になるのか?
スーパーマーケット大手トップのPXマートは2021年10月22日(金)、RT-Martの買収を発表し、フランスのオーシャングループと不動産大手「Runtai」グループ株式の95.97%を買収した。
取引額は130億元と推定され、一挙に量販店へと踊り出た。
PXマートによるRT-Martの買収はカルフールを抑え込むためだと解釈されているが、一部の専門家は、カルフールのアジア市場からの撤退は時間の問題であり、台湾の小売業界は最終的に統一グループとPXマートの一騎討ちになるのではないかと推測している。
2021年に入ってからRT-Martとカルフールの売却の噂が飛び交っていた。
PXマートのLin Minxiong(林敏雄)会長はイベントで「両店が買収について話し合うためにPXマートを訪れた」と売却の噂が真実であることを明らかにした。
当時Lin Minxiong(林敏雄)は神妙な面持ちで「両者とも売る必要がある。一番になれなければ、生き残れない。量販店は良い産業とはいえない」と語った。
その後、RT-Martの買収に踏み切ったLin Minxiong(林敏雄)だが、その背景にはどんな思惑があったのだろうか?
熾烈な争いを繰り広げる量販業界で、PXマートがRT-Martを買収した3つの目的とは
台湾の流通リサーチ企業「未來流通研究所」の資料によれば、台湾の量販業界は大手3社が全体の86.8%を占めており、順位はアメリカのコストコ(42.8%)、フランスのカルフール(32.3%)、最後に今回買収したRT-Mart(11.7%)が上げる。
林敏雄が「良い産業とは言えない」と口にしたのは、市場競争があまりにも激しすぎるためだ。
「業界のトップ3に食い込まなければ、規模を大きくするのは難しく、利益もあがらない」
未来流通研究所の本部長であるLin Yuanqing(林原慶)は「PXマートが買収によって市場のシェアを獲得したのは、賢いやり方だった」という。
理由1:小売業界の境界線が曖昧になり、全ての方面に展開している
PXマートがRT-Martを買収したのは何故か。
第一に、小売業界の境界線が曖昧になっていることが挙げられる。小売業界では通常、量販店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、百貨店などに分かれているが、境界線はどんどん曖昧になってきており、両社間では激しい競争が行われているという。
「例えスーパーマーケットとしてトップに躍り出たとしても、今後は競合相手がコンビニエンスストアや量販店になることもありえる。スーパーマーケットの枠組みに囚われず、業界を跨いだ経営を行うことは、今や台湾の小売業にとってなくてはならない戦略となっている」とLin Yuanqing(林原慶)は語る。
各社の発展をみていると、量販店は「スーパーマーケット」になり、スーパーマーケットは「量販店」化している。コンビニエンスストアでさえも、取り扱い商品の豊富な大型店舗を出店したいと考えている。例えば、カルフールは2020年末に199店舗の「ディンハオウェルカムスーパーマーケット」と、25店舗の「ジェイソンズスーパーマーケット」を買収し、コミュニティスーパーマーケットとトップスーパーマーケットの分野を深く開拓した。
PXマートは近々南港に4,000坪もの広さの大型店をオープンさせ、スーパーマーケットだけでなく、電化製品販売大手の「全國電子」や書店の「金玉堂」、スニーカーショップ「鞋全家福」などの業者にテナントを誘致し、ワンストップショッピングのニーズを充実させる予定だ。
PXマート南港の大型店では、消費者のワンストップショッピングのニーズを満たすため、様々な業界から店舗を誘致している。
コンビニエンスストアの動きも著しい。
セブンイレブンを経営する「統一企業グループ」はコンビニエンスストア以外に、スターバックスやミスタードーナッツ、コールドストーンや大手ネット書店「博客来」など10社のテナントなどを誘致し、高雄に最初の「ハイクオリティライフセンター」をオープンさせた。
引用:統一超商
小売業界は、小型店舗や中型店舗、大型模店舗から、オンラインショッピング、無人店舗などの開発に際し、オンラインとオフラインの統合であらゆる消費者のニーズに答えることができる。
コロナの流行後は、スーパーマーケットで大量に物資を求める消費者が増えた。
人々の外出が減ったが、その代わりにオンラインショッピングが発展、普及することとなった。
RT-Martの買収はPXマートにとって、豊富な商品の種類や消費者の顧客基盤、更に物流面においても、量販店へと進化するための欠かせないピースであった。(林原慶・Lin Yuanqing/未来研究所本部長)
理由2:生鮮食品eコマースのワンストップショッピングの発展
2つ目の理由は、PXマートがRT-Martを買収すれば、生鮮食品の大手オンラインショップとして、momoなどの大手eコマース企業と戦えるためである。ビジネス研究所国際デジタル研究所の所長であるDaiFanzhen(戴凡真)は、「PXマートは多くの住宅街に店舗を設け、短距離の配達サービスを行う『店舗型』のeコマースモデルを描いている。一度の買い物での購入量が多い量販店の特性を鑑みれば、eコマースの規模や効率は自動的に上がるはずだ」と話す。
PXマートが「住宅街に生鮮用品の倉庫を設置する」をモットーに開店されたのが、24時間営業の「快速専門店(大安区・延吉店)」だ。
さらにmomo、PChomeの大手eコマースにおいて、生鮮品の販売においてはまだ始まったばかりだ。
PXマートはRT-Martを買収することで、非生鮮品の商品、量販店で取扱のある家具や電化製品、衣料品などをも販売することができ、取扱商品をより多様化することができるだろう。
理由3:買収により自社の経済規模を拡大させる
PXマートのLinMinxiong(林敏雄)代表はかつて「小売業界は規模の大きさに依存している。市場のシェアが大きくなければ必ず淘汰されるだろう」と語った。
1998年に経営を任されたとき、PXマートはわずか66店舗にすぎなかった。
その後買収を繰り返し企業規模を拡大させ、2004年には「楊聯社」から始まり、「SUNMAKE」、「台北農產超市」、「OBUYING(全買超市)」、「MATSUSEI(松青)」などの食料大手チェーン店を、
最近では2018年に老舗のベーカリーショップである「白木屋」をも買収した。
「あらゆる先進国の小売業界では、常に巨大な企業が誕生している。アメリカのWal-Mart(ウォルマート)や、日本のセブンアンドアイホールディングス、英国のTESCOやドイツのMETROなど代表的だ。
PXマートは2021年10月末に蓮歩数が1,060を超え、台湾本土のスーパーマーケットではトップに君臨している。林敏雄はこれからもPXマートの拡大を続けていくだろう。」Lin Yuanqing(林原慶/未来研究所本部長)
スーパーマーケットの市場において、PXマートの最大の競争相手はどこだろうか?
Lin Yuanqing(林原慶)は、市場のシェア率からみれば、PXマートの次の最大の競争相手は「コストコ(Costco)」と「カルフール(Carrefour)」になるだろうと指摘した。
その中でもコストコ(Costco)は特別なビジネスモデルを持っているため、第二のコストコ(Costco)が生まれることはない、かつてPXマートのLinminxiong(林敏雄)も「コストコ(Costco)は読めない」と語ったという。
台湾カルフールは売却のリスクを抱えており、どの小売業がカルフールを買収しても、PXマートと競争することになるだろう。
RT-Martだけではなく、台湾カルフールも売却される可能性があるのだ。
カルフールを買収するのは誰か?専門家「統一グループは機会を待っている」
外からみて最も興味深いのは、なぜPXマートが最終的にカルフールではなくRTマートを買収することを選んだのかということだ。 台湾カルフールの株主構成をみてみると、本社フランスのカルフールが6割、次に統一企業グループが4割(子会社20.5%、統一本社19.5%)を保有している。
台湾カルフールは、アジアで唯一生き残っているが、フランス本社は彼らの株式を早く売却したいと考えている。
「もしPXマートがカルフールフランスの株式を購入すれば、統一企業グループと共同保有することになり、今後の統合や合併が複雑になる」Lin Yuanqing(林原慶/未来研究所本部長)
ビジネス研究所国際デジタル研究所の所長であるDaiFanzhen(戴凡真)は、カルフールのアジア全面撤退は時間の問題だ。最後に買収するのは統一企業だ」と語る。
事情をよく知る人によれば、カルフールの本社フランスはアジア撤退のため売却をしたいが、台湾側が売りたくないと言っているのだそうだ。売却有無のやりとりには時間が掛かっており「カルフールはまだ決め切っていない。PXマートに機会がないということはない」という。今後カルフールがどこに売却されるのか、業界では注目の的となっている。
「カルフールのアジア撤退は時間の問題だ。最後に買収するのは統一に違いない。統一グループは今は動いていないが時期を見計らってる。良い価格、またどのようにコンビニエンスストアとスーパーマーケット、量販店を統合させるかのかを思考している。カルフールは統一グループにとって目先の肉だ。ただいつ食べようか見ているだけだ。」DaiFanzhen(戴凡真/ビジネス研究所国際デジタル研究所 所長)
最終的に台湾の小売業界は、統一グループとPXマートの一騎討ちとなるだろう。