退役軍人センターは台湾全国に16箇所あり、床数は8,500を超える、台湾最大規模の老人ケアホームである。またテック企業や学術機構にとっては、最新のさまざまなテクノロジーを試行するための重要な拠点となっている。
退役軍人センターは企業に対し非常にオープンで、テクノロジーのベンチャー企業から歴史ある電子機器工場まで、テクノロジーが介護ケアに与える新たな可能性を見つけるため、積極的に協力をしている。
イノベーション実例1:スマートマットレスをアプリを繋げ、24時間自動介護体制に
枕下にスマートマットレスを設置
枕下にスマートマットレスを設置枕下に厚さ2mmほどのスマートマットレスを敷き、光ファイバーによるモニタリング技術(nFOPT)を利用して患者の呼吸、心拍、睡眠や離床状況を把握できる。電源を入れると、24時間オンラインで患者の状態を確認できるため、介護に掛かる労働力を大幅に減らすことができる。
内蔵したWi-Fiを通してデータを受信
病棟の廊下天板部分(画像の丸点線部分)には、IoTゲートが設置されている。スマートマットレスには、Wi-Fiネットワーク機能が組み込まれており、データを即時、システムに送ることができる。
IoTゲートを利用すれば、複数の病棟のスマートマットレスも管理でき、部署内での連携もスムーズだ。
ワンストップで状況が確認できるダッシュボードはとても見やすい
板橋の介護センターでは現在15床のスマートマットレスを設置しており、
ナースセンターにあるモニターでは常に、一目で全ての患者の状況を把握することができる。またベッドにいる患者の状態を表すためにさまざまな図を利用し、グラフによってさらに詳しい状態を確認することもできる。
患者がベッドを離れると、すぐに警告が表示され、看護スタッフに注意を呼びかける仕組みになっている。
患者個人のデータを保管し、記録も
このシステムでは、最新の状況をモニタリングできるのみでなく、個々の患者に個別のベッドアクティビティを提供することもできる。
看護スタッフは患者の詳細な睡眠活動記録、離床記録、心拍などを確認することができる。
日々の心拍数を分析
スマートマットレスでは、患者のベッド上での心拍数の変化を毎日記録し、分析している。その日の活動記録から、毎分の心拍数の変化に異常がないかなどを確認できる。これらは患者である高齢者の日々の健康状態を見極めるのにとても重要な資料となる。
週次および月次レポートから経過パターンを観察し、将来の介護状況を予測する
リアルタイムのアラートと毎日の心拍分析の主な目的は、介護者がいないときでも即時に異常を見つけ、事前に防ぐことにある。
もう一つの重要な役割は、週ごとの活動分析と月ごとの活動分析である。患者を介護する際に、異常な状況が定期的に発生するのか、もしくは一定のパターンがあるのかを観察し、将来的な介護の不安要素をできるだけ取り除くために利用されている。
イノベーション実例2: 健康データの自動アップロード
さまざまな健康データの統合
このデジタル血圧計の上の画面は、オフラインでも使用できるモニタリングデータの自動アップロードシステムだ。各病棟に設置し、血圧を含む様々な健康データを収集してアップロードできるため、紙や手作業による手間を大幅に削減できる。
さまざまなIoT健康測定データを統合
このシステムは、ワイヤレス体温計やデジタル血圧計などのさまざまな健康管理デバイスを組み合わせて、体温、呼吸、体重、血中酸素、血糖、血圧などのさまざまなデータを自動で収集することができる。写真は、測定結果をリアルタイムで自動的に取り込むデジタル血圧計であるが、複数の測定データを一度に記録することも可能だ。
VPNを介してオフラインで記録された情報も保存が可能
看護スタッフは、測定機器を各病棟のベッド横に装着し、患者の計測データをネットワークを通さずオフラインで確認することもできる。
これらのデータは、無線ネットワークを解してVPNを利用すると、自動的に退役軍人センターのシステムにアップロードされる。
システムへリアルタイムでデータをアップロード
患者の健康データ測定が完了すると、データは退役軍人センターの看護情報システムに自動的にアップロードされる。
他の看護師がシステムにログインしても、各患者の最新の健康測定データをすぐに確認することができる。
これまでは血圧などを健康データを測ったあと紙に記録してからシステムに入力していたが、自動アップロードにより、作業はより迅速となり、打ち間違いなどのミスも減ったという。
移動式タブレッドでのデータ照会も可能
看護スタッフは、タブレットを使用して、システム内の患者の健康データを照会することもできる。タブレッドは持ち歩いて、部屋を巡回しながら見ることができるので、患者の健康状態を常に把握しながら適切なケアを行うのに役立っている。
イノベーション実例3: AIによるスマートケア
レーダーが患者の健康データを自動的に採取
ベッド頭上に設置されたセンサー(画像中央上の赤い点線)は、
レーダー波での検知を利用して、心拍数、呼吸、離床時間を検出できる(検出範囲は主に上半身となる)。これにより、看護師などが測定機器を装着する必要なく、自動的に健康状態を測ることができ、入居者も日常生活に支障をきたすことがない。
LINEを使用したアラートで健康状態をタイムリーに表示
AIによるスマートケアでは、120秒間に30回以上の呼吸、または30秒間に40回未満、120回以上の心拍数など、患者に合わせた健康状態を個別に設定することができる。
規定の値を超えると、コンピューター画面のみでなく、LINEでも警告アラートが表示される。看護スタッフが他の場所でパトロール中にも、スマートフォンですぐにアラートを受け取り、現場に駆けつけることが可能だ。
スマートフォンを使用して分析レポートを確認、追跡も
LINEで送られてきたリンクをクリックすると、スマートフォンからでも高度な患者のこれまでの状況を確認することができる。
各患者の夜間の離床状況などもスマートフォンですぐに確認でき、看護スタッフの現場での労力を削減している。
イノベーション実例4: 照明をコントロールし、生活リズムをつくる
照明をヘルスケアのツールとして使用
退役軍人センターでは、照明全体をシステムでコントロールし、天井の光の強さを調整して昼と夜の変化を再現し、利用者の日常生活を管理することができる。1日中建物の中にいても、明りによって昼と夜をシュミレーションすることで、生活が整い、睡眠障害や認知症を患った高齢者の昼夜逆転を避けることができる。
光制御システムはテクノロジー業界ではすでに一般的に利用されているものであるが、介護センターとしては「退役軍人センター」が初めてシステムを導入した機関である。
スマートフォンのアプリでスケジュールを設定
照明は、スマートフォンのアプリからいつでも手動で調整することも、事前に設定することもできる。板橋介護センターでは、先に明るさを時間に分けて細かく自動設定しておき、簡単に変更できない仕組みにしている。 正午が最も明るく、夕方になると徐々に暗くなる。午後8時か9時になると、廊下の一列にしかライトはなく、利用者は「寝る時間なのだ」と体感することができる。
撮影/洪政偉