
ヤニックの自動販売機が高雄MRTに進出
1日平均500個のケーキを販売するヤニック(亞尼克)のYTMケーキ自動販売機が売上の10%を突破しました。好調の秘密は、生クリームロール、カットケーキなど同社の商品がZ世代の心を掴んだことにあります。
2025年9月17日、ヤニックは高雄市のMRT(地下鉄)駅にYTMケーキ自動販売機を設置することを発表しました。

ヤニックは2018年に6,000万台湾ドルほどを投じて、国内初となるケーキ自動販売機を自社で開発しました。今回のYTMケーキ自動販売機の高雄市MRT駅への進出は、台北MRT以外への初の設置となります。
昨年8月には、ヤニックはYTMの設置場所の拡大を発表し、台北MRTの21駅から一気に51駅へと増やしました。そして今回、高雄MRTの10駅にYTMを設置することが発表されました。
YTMでの販売数が1年間で2.3倍に増加
YTMの設置台数を拡大した理由は、ここ1年間の好調な売上げです。
当初、ヤニックは新たに30台の販売機を設置することで、YTMの売上が総売上高の5%を占めると予想していましたが、昨年末時点ですでに10%を超えていました。
さらに、今年の7ヶ月間だけでYTMの総販売個数は10万個を突破し、以前と比べて販売量が2.3倍以上に成長しています。現在、1日あたりの平均販売個数は500個に達しています。

YTMが世に出てからの7年、決して順風満帆ではありませんでした。
初年度、YTMは大々的に発表され、台北MRTの54駅に一気に導入されました。ですが、当時の販売量は当初の予想のわずか5割ほどで、販売機内の商品廃棄率と損耗率は20%を超えたこともあります。
2023年に台北MRTとの契約を見直し、ヤニックは台北MRTの15駅に「YTM第2世代機」を導入して再出発しました。これが、今では台北と高雄市のMRTで合わせて61駅に設置される成果へと繋がったのです。
「伸び悩んだ時期を経験し、改良したYTM第2世代機は、我々にヤニックの競争力の要は商品の力だと気づかせてくれた。」と、吳宗恩氏は苦笑しながら語ります。
去年登場した第2世代機は、自社での開発や設計にこだわることなく、外部企業と協力しました。故障率が1~2%から0.01%まで下がっただけではなく、販売可能な商品が生クリームロールだけに限らず、箱入りやカットケーキなどに広がりました。
これらの改善によって、第2世代機の商品廃棄率は7%と低くなり、使用率が初代機の2倍以上になりました。開発コストは、自社で開発した初代機に比べて1/3に抑えられています。
今では、かつてYTMの開発に注いでいた力を、商品の企画に注いでいます。
YTM利用者の要求を満たすような商品の販売
ヤニックがYTMの利用者を調査したところ、ヤニックの従来の主要な顧客である25〜40歳よりも若い層が多く、25歳以下の利用者が20%を超え、その7割が「試してみたい派」の女性だったそうです。
この結果を踏まえ、ヤニックは4カット入りの生クリームロールケーキを売り出し、少量のスイーツが欲しいというYTMの利用者の要求に答えています。

さらに、透明なショーケース付きの第2世代機を導入したことで、同社の開発チームが生み出した斬新でトレンド感のあるフレーバーを効果的に販売することが可能になりました。
例えば、今年7月に発売した「ミントチョコレート生クリームロール」は、YTMでの販売本数が1万本を突破し、その売上比率が実店舗を上回りました。
安定した顧客層の支えによって、ヤニックはYTMを武器に新たな市場に挑戦できます。
今回、高雄MRTを新たな設置先に選んだ理由について、呉宗恩氏は次のように説明します。
「駅間の距離が近く、メンテナンス人員の負担が少ないMRTは、現時点でYTM展開の最優先候補だ。例えば、YTMを50台以上展開している台北MRTでは、毎日の点検・運用に必要な人員はわずか4名程度で済んでいる。」

高雄MRTの年間利用者数は100万人を超えて増加傾向で、将来的に台湾第3の軌道系の交通システムに成長する可能性があります。
「現在、高雄MRTの10駅に設置したYTMは、新市場を試すための前哨戦だ。まずは、1台につき1日10~12個の販売を目標とし、損益分岐点の達成を優先する。その後、利益拡大を目指していく。」と呉宗恩氏は指摘します。
YTMを設置した高雄MRT駅の選定基準については、住宅地に近く、人通りが少ない駅の方が売れ行きが良いという、これまでの台北MRTでの経験が活かされています。
例えば、台北近郊の景安、蘆洲、新莊など新北市の住宅地に隣接する駅は、YTMの売上トップ3に入ります。他社にとってスイーツの販売に向かない場所が、ヤニックにとっては好立地となっていると言えるでしょう。
今回の高雄進出においても、競合他社の空白地帯を狙う戦略を取り、小港や楠梓など地域密着型の駅を中心に設置しています。一方、美麗島駅のような人通りの多い場所にはあえて設置していません。
昨年6店舗を閉店、今後の販売チャネルについて
ヤニックは昨年初めに6店舗を一気に閉めました。8月にはYTMの設置拡大による補填があったにもかかわらず、2024年の総売上は約20%減少しました。
今後、販売チャネルをYTM中心にするのかという問いに対し、呉宗恩氏は「今のところ、実店舗の出店をやめるつもりはない。実は、路面店の新規出店を検討しているが、人手不足という主要な課題がある。」と答えています。
昨年以降に新たにオープンした3店舗はすべて百貨店内にあり、その理由は、百貨店のブースなら路面店の約半分の人員で済むためです。しかし、百貨店内では競合ブースが多く、実際には路面店の方が売上への貢献が大きいとも話します。

ヤニックは現在、できるだけ多様な販売チャネルを活用して新たな顧客層との繋がりを作っています。
例えば、YTMの利用者の9割は既存会員ではないこと、実店舗の売上の約1割はフードデリバリー経由であることなどが挙げられます。
「2026年の第1四半期に予定している第3世代YTMと新店舗モデルの投入で、さらなる成長が期待できるだろう。」と呉宗恩氏は語ります。
引用元:https://www.bnext.com.tw/article/84506/ytm2.0-go-to–kaohsiung
