注目の台湾スタートアップ若美科技(ルオメイ・テクノロジー)

アジアイノベーションカップで産業影響力賞受賞

金融監督管理委員会(Financial Supervisory Commission)が主催する「台湾ウィークス2025」が大盛況のうちに幕を閉じました。

「台湾ウィークス」の一環として開催されたアジア・イノベーション・カップは、新興企業と資本市場を繋ぎ、成長を促進することを目的としたイベントです。

2025年のアジア・イノベーション・カップでは、台湾の若美科技(ルオメイ・テクノロジー)が産業影響力賞を受賞しました。

若美科技は2022年8月に設立されたベンチャー企業で、同社の中心的なチームは10年以上にわたる研究・開発の経験を有しています。

同社はエンド・ツー・エンドの放熱ソリューションに注力し、材料科学とAIを融合させて放熱と脱炭素を両立する革新的なモデル企業となることを目指しています。

次世代放熱ソリューションを実現するスタートアップ

AI時代の到来によって、放熱分野は従来の課題がより顕著になる一方で、台湾の若美科技(ルオメイ・テクノロジー)が参入する絶好の機会にもなっています。

チップ性能の指数関数的な向上に伴い、GPU・CPU・HBMという複数のチップを積層してパッケージングする構造になり、熱の蓄積が深刻化しています。

特にAIアプリケーションのもとでは、従来の熱対策はすでに限界を迎えていると言えるでしょう。

過熱は、チップにサーマルスロットリングを発生させ、チップの動作速度を低下させて性能の損失を招くだけではなく、持続可能な脱炭素の面でも課題になります。

このような欠点が世界的な熱管理技術および材料への新たな需要に繋がり、巨大なビジネスチャンスを生み出しています。

全世界の熱管理市場は2024年に約765.7億米ドル規模に達し、2034年には1,410億米ドルまで成長すると予測されています。

若美科技のブランドマネージャーである林斯涵氏は、「このビジネスチャンスを掴むために、当社は独自の絶縁伝熱材料とAI解析ツールを融合させ、既存の放熱技術の壁を突破することを目指している。AIサーバー、電気自動車、5Gインフラなどの消費電力の高い市場をターゲットに、軽量化・統合化され、より持続化された熱管理場面を提供している」と述べています。

若美科技がアジア・イノベーション・カップで審査員の支持を得た理由の一つは、「材料・AI・サービス」を統合した3つのビジネスモデルにあります。

林氏はピッチの中で、同社の主な収益源を次の3つに分けて述べました。

  1. 独自開発の熱伝導性ポリマー複合材料の販売によって、内部の放熱性能を向上させ、直接的な販売収益を得ること。
  2. AI技術をサービスに組み込み、熱シミュレーションAIプラットフォームやアクセラレータの設計サービスを提供し、サブスクリプション料・サービス料・カスタマイズ契約料のような続的な収入源を得ること。
  3. 先進的な製造技術を取り入れ、高性能な放熱ハードウェアや3Dプリンタを活用した微細流路冷却プレートを提供すること。これは、高度なAIサーバーの液冷市場をターゲットとし、特に、将来的に消費電力が2,000Wを超えるであろうNVIDIAチップの需要に対応することを目指す。

林氏によれば、この三大ビジネスを統合した結果、若美科技は設立からわずか3年で世界90社以上の顧客とテスト検証を行うまでに成長したそうです。

すでに、同社はデルタ電子(台達電)、ADATA(威剛科技)、コンチネンタルAG(德國馬牌)、AMD、アンフェノール(安費諾)の正式なサプライヤーとなっています。

さらに、現在はNVIDIA、HP、Dell、Lenovo(聯想)、MSI、Accton(智邦)、Auras(奇鋐)、JENTECH(健策)、Cooler Master(酷碼)などと積極的なテスト及び開発を進めています。

若美科技が描く2028年の上場までの道のり

若美科技(ルオメイ・テクノロジー)の2023年度の売上高は30万米ドルに達しました。2029年までには売上を数十倍に拡大し、1億5,000万米ドルに到達する見込みです。

今回のアジア・イノベーション・カップへの参加について、林氏は「我々の主な目的は2つある。

1つ目は、ブランドの認知度と市場での露出を高めること。2つ目は、潜在的な顧客の注目を集め、同社事業の継続的な成長を促進することである」と話します。

売上の好調な伸びに加え、林氏は資本市場への具体的な進出の計画についても言及しました。

若美科技は、すでに新北市政府の「イノベーション・クリエイティブ審査(創櫃板登録に向けて、新北市政府が企業の適格性を判断する審査)」を通過し、さらに台湾の「創櫃板(Go Incubation Board/ベンチャーボード)」の審査にも合格しています。

今後はOTC市場において3年間の上場準備指導を受け、2028年の上場を目指します。上場先については、企業規模に応じて米国・日本・台湾のいずれかを検討する予定だそうです。

現在、同社の資金調達活動も進行中で、ここ1、2年でエンジェルラウンドを開始する予定です。

調達した資金は品質管理ラボの建設、原材料の年間生産能力を400トンまでに拡大するための設備投資、そして次世代材料の研究・開発に使う予定です。

AIとサステナビリティという二大潮流の中で、若美科技が提供する技術ソリューションは、新世代の熱管理インフラを牽引する存在であり、世界のデジタル化とグリーントランスフォーメーションを導く不可欠な存在になるでしょう。

引用元:https://www.bnext.com.tw/article/84961/2025asia-innovation-cup-3

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