
平面レンズ技術を有するMetaOpticsが最優秀賞
金融監督管理委員会(Financial Supervisory Commission)が推進するアジア・イノベーション・キャピタル(AIC)が、正式に設立されました。
アジア・イノベーション・キャピタルの目的は、台湾をアジアのナスダックに押し上げることだけではありません。
特に重視しているのは、国外からのスタートアップの誘致です。
国際的に有望なスタートアップを台湾へ迎え入れ、台湾の産業チェーンとの協力を通じて、双方に利益をもたらす関係を築くことを目指しています。
これに伴い、台湾ではアジア・イノベーション・カップが初開催されました。
同大会には世界から70組以上の応募があり、最優秀賞を受賞したのはシンガポールのMetaOptics Technologies Pte Ltdでした。
MetaOpticsはフロントエンド半導体の光学分野に注力し、平面レンズ(メタレンズ)の設計・開発・製造ソリューションに特化している企業です。
MetaOpticsの設立と世界メタレンズ市場での地位
MetaOpticsは2021年6月に設立されました。
2024年末時点で、全世界のメタレンズ企業の中でも5本の指に入り、量産の可能性と出荷量を備えたメタレンズ企業としては3位になります。
MetaOptics Ltdの副最高経営責任者であるAloysius Chua氏は、同社チームが最先端のガラス基板の光学技術を掌握しており、現在までに40件の特許(同社単独で取得した17件と、シンガポール科学技術研究庁と共同で取得した23件)を保有していると述べました。

従来の3Dレンズ(スマートフォンのSLRレンズなど)は、完璧な写真を撮影するために複数のレンズを重ねて組み立てる必要があります。
しかし、この「重ねる」方式では、カメラモジュールが大型化し、デバイス内で大きなスペースを占有してしまいます。
MetaOpticsの平面レンズは半導体の製造過程を活用し、超薄型ガラスの平面にナノレベルの精密な構造(メタサーフェス)を刻み込むことができます。
これにより、光の制御動作を一つの表面に「平面化」でき、光の進行方向を正確に制御できるだけではなく、光学部品のサイズを大幅に縮小することを可能にします。
同技術の優位性を背景に、MetaOpticsは製造や設計等の多方面で前例のない実績を残しています。
同社は、世界初となるメタレンズを搭載した12インチ(300mm)のガラスウェーハの製造に成功し、半導体サプライチェーンに参入したスタートアップです。
さらに、カラーレンズの開発にも成功しており、平面レンズによるカラー撮影を実現した世界初の企業でもあります。
また、AI強化光学技術(AI-Enhanced Optical Technologies)を有し、低画素の映像でも解像度を500~800万画素まで引き上げることが可能です。
これらの成果は、資金調達の進捗や業界からの評価に表れています。
MetaOpticsの資本金は1.5億台湾ドルで、Aloysius Chua氏は同社の市場評価額を約11.85億台湾ドルと述べています。
現在、同社は約2億台湾ドルの資金調達を進めているところです。
さらに、MetaOpticsは業界からも高く評価されており、今年、シンガポールのAIスタートアップの中で初めて、クアルコムのAIプログラムに認定された5社のうちの1社となりました。
台湾の半導体市場に注目するMetaOpticsの戦略
MetaOpticsがアジア・イノベーション・カップに参加すると同時に、台湾市場に注目している理由について、Aloysius Chua氏は次のように説明します。
「台湾は世界の半導体サプライチェーンにおいて中心的な存在で、非常に大きな可能性を秘めた市場だ。最先端の半導体製造技術で世界をリードしているが、台湾には平面レンズの技術がまだない。そこで、わが社の技術と設備を台湾に導入したいと考えている。」
光電融合(Co-Packaged Optics)の平面レンズ技術は、今後5年間で需要の大幅な増加が見込まれていることを踏まえ、MetaOpticsはすでに台中最大のカメラモジュールメーカーと提携しています。
また、独自に開発した4インチフォトリソグラフィー装置を台湾のパートナー企業(Pin-Jye Nano Technologies Co., Ltd.)に販売する契約を獲得し、自社の技術優位性を活かしてAI CPUウェハーの光電融合(Co-Packaged Optics)等の最先端分野への参入も進めています。

MetaOpticsは2025年9月、シンガポール証券取引所のカタリストボード(Catalist Board)で上場しています。
アジア・イノベーション・キャピタル(AIC)の設立を受け、MetaOpticsは将来的に台湾の資本市場への参入を検討しているのかという質問に対し、Aloysius Chua氏は次のように述べました。
「わが社は臨機応変な戦略を取っており、将来的には台湾、米国、日本、韓国のいずれかでの上場を検討するかもしれない。最終的には、会社の顧客層やサプライチェーンの所在によって決めるだろう。ただし、台湾が重要な市場であることは間違いない。」
市場の大規模な需要に対応するため、MetaOpticsは台湾に工場を設立する計画を立てています。
量産の段階に達した際には、台湾のパートナーとともに生産ラインの拡大も検討するそうです。
アジア・イノベーション・カップへの参加やサプライチェーンとの連携を通じ、MetaOpticsは台湾の巨大な半導体産業クラスターを活用し、同社の技術や製品を一層広めていくことになるでしょう。
引用元:https://www.bnext.com.tw/article/84960/2025asia-innovation-cup-2
