ここ2年間の新型コロナ流行の中で、飲食業界は厳しい状況に置かれ、消費者習慣の変化に対応するため「飲食店のEC化」という流れが生まれた。1万2千店舗以上の飲食店にサービスを提供し、飲食店におけるテクノロジー分野を牽引するiCHEFが発表した「2021 餐飲景氣白皮書(飲食業白書)」によると、飲食業者のインターネット上売買の割合は、コロナ流行期以前の2.5%(2019年第4四半期)から流行安定後の10%(2021年第4四半期)へと4倍に増加しているとのことだ。
このような傾向の中、小さな路面店から始まり人気店へと成長した「路邊烤肉」は、どのようにして多様なサービスを提供する「飲食店のEC」化を遂げたのだろうか。
キャンプ野外調理や結婚式への「出張サービス」を展開
「路邊烤肉」の創業者である李倫氏は、コロナ禍で店内飲食が制限された中でも、対面での「食事体験」を重視するという創業精神を貫くため、デリバリーサービス業務は全体の10%以内におさえ、店舗外でのサービスを展開することが重要な課題であったと述べた。
91APPのシニアバイスプレジデントである汪君羽氏は、「飲食業は体験を非常に重視する業種だ」と述べた。李倫氏にとって、野外で焚火を囲みバーベキューをする雰囲気を味わうことが、「路邊烤肉」の体験の中核である。そのような雰囲気は山や川、海辺などどこでも味わうことができ、キッチンカーを活用することで、アウトドア結婚式や大型音楽フェス、団体キャンプ等の様々なイベントに足を延ばし、飲食サービスを拡大した。
これまで何百ものイベントを開催してきた李倫氏は、屋外環境の不確実性や様々な顧客の要望に対し、顧客の好みに合わせて綿密にメニューやイベントの雰囲気を作り出す必要があるため、イベントごとに新しい試練が待ち受けていると考える。彼は「台湾式の辦桌(宴席)とヨーロッパ式のビュッフェスタイルの結婚式では、メニューや方針は全く異なり、このような『出張サービス 』を行う場合必ず考慮しなければならないポイントである」と具体例を述べた。
ECに挑戦し、生鮮食品の販売を開始
「路邊烤肉」のEC事業展開は新型コロナ流行のみが契機ではなく、流行期以前から消費パターンの変化を見出し、またネット通販の普及を考慮して、「路邊烤肉」の食材をネットを通して消費者に楽しんでもらう考えに至ったと李倫氏は述べた。
「EC事業は店舗の代わりではなく、店舗を補填するものである。」 飲食のカスタマージャーニーは店舗での消費体験や口コミが中心であり、実店舗に行ったことがない人でも、周囲の人々が認知していることでブランド価値を作り出すことができると李倫氏は考える。ブランド力を構築をすることで、重複しやすい飲食業の中で差別化を図ることができる。優れたオフラインでの消費体験を土台に、ECによってさらに実店舗の空間的・地理的制限による不足を補い、デジタル化を通してカスタマージャーニーと連動するのだ。
食事を終えたお客様にECサイトを併せてお勧めし、会員登録や商品の購入を促すことができると李倫氏は例を挙げた。 ECにより時間、空間、商品の幅を拡張することで、より多くのお客様にアプローチできる。また店舗側にとっては、様々な商品の組み合わせにより客単価の上昇も期待できるのだ。
フードデリバリープラットフォーム卡個位(CUTAWAY)のCEOである王耀誠氏も、飲食業は日常の食事や店頭での消費を基盤とし、オンライン商品でシーズンや行事ごとの大きな需要を利用することで、顧客単価の引き上げができると述べた。
iCHEFの共同創業者である程開佑氏は、アフターコロナ時代の飲食経営は益々EC化を進め、食品に加えより多くのサービスを「商品化」する流れになると考えている。「路邊烤肉」のような商機やデジタル化の展開は、今後全ての飲食経営者の課題となるだろう。