台湾積体電路製造(TSMC)は熊本県に建設予定の半導体工場ついて、2022年に着工し、2024年末までの生産開始を見込んでいる。それに伴いTSMCの熊本工場では求人を開始し、現地の平均を大きく上回る給与を提示している。大卒者への給与待遇は日本の大手電機メーカーであるソニーにすらも勝っている。
2月24日の日刊工業新聞によると、TSMCの九州・熊本県に新工場を建設する計画が引き金となり、九州地方での技術系人材の争奪戦が勃発する。TSMCの熊本工場は高給待遇で人材確保を図り、提示する額は九州の平均より7万円以上高いことが分かっているが、これはソニーをも上回る。 日本の半導体技術者の給与は国際的に見ても低く、処遇改善は業界として本来歓迎すべきことだが、人材の過度な集中や人件費の上昇は、同業他社の経営を圧迫する恐れがある。
インターネットの就職情報サイトによると、TSMCの熊本にあるロジック半導体製造会社「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)」は、設備機器、環境・安全・衛生、生産管理、プロセス設計等のエンジニアを募集しており、2023年4月入社を見込んでいる。 JASMは、学部卒で月給28万円(約6万5千台湾ドル)、修士で32万円、博士で36万円の給与額を提示している。 厚生労働省の資料によると、九州7県の新規大卒者の平均月給は20万8000円で、熊本県に限定すると21万2400円だ。
熊本県内には同業の半導体メーカーが多数存在する。就職情報サイトによると、TSMC熊本工場の近くにあるソニーの半導体製造子会社「ソニーセミコンダクタソリューションズ(Sony Semiconductor Solutions)」の大卒者の給与は月22万9500円であり、ソニー本体でさえも月25万円にとどまる。
三菱電機やルネサスエレクトロニクスも同じく熊本県内に半導体工場を有するが、大卒者の月給は21万7000円であり、JASMの給与待遇が現地の同業他社より際立って優れていることが分かる。熊本県に隣接する大分県や福岡県にも東芝やロームの生産拠点があり、県をまたいだ人材争奪戦が今後激化しそうだ。
日本政府は、先端半導体工場の建設に補助金を支給する半導体支援法を3月1日に施行することを発表した。 TSMCを第一号として、熊本県での新工場建設計画が初の申請案件となる見通しだ。最大で「半額」の補助金を受ける見込みである。
TSMCは2月15日、熊本工場への投資を拡大し、設備投資額を既発表の約70億米ドル(約8000億円)から約86億米ドル(約9800億円)に引き上げ、月間生産能力を4万5千枚(300ミリウエハー換算)から5万5千枚に約2割増強すると発表した。さらに当初計画の回路線幅22─28ナノメートルに加え、12─16ナノメートルの半導体生産も導入する予定であると発表し、日本政府から強い後ろ盾を得ることを前提に検討している。
熊本工場は、先端技術に通じた人材約1700人の雇用を創出する見込みだ。(前回発表時は約1500人)