
拡大を続けるAIユニコーン企業Appier(エイピア)
マーケティングテクノロジー企業のAppier(エイピア)は、8月14日に2025年度第2四半期(4月~6月)の業績を発表しました。
今期の売上高は103億円(約21億台湾ドル)で、前年比27%増となり、過去最高を記録しました。為替変動の影響を除いた場合、年成長率は35%に達し、過去2年間で最高となります。
CEOの游直翰氏によると、売上の成長は主に既存事業の拡大と2月に買収したAdCreative.aiによる主要市場での戦略的な貢献によるものだそうです。
注目すべき点は、Appierが今年初めにAdCreative.aiを買収したことで、損失や運営コストが計上されていても、営業利益率は前年同時期と比べると倍の7.8%に達しているところです。
営業利益は8.06億円と過去最高を記録、前年比130%となり、収益性の大幅な向上がわかります。
游直翰氏は、「今は私たちにとって、努力が実を結ぶ時代だ。」と述べています。
現在はAIエージェントの時代で、Appierが過去10年にわたって投資している分野と一致してきました。Appierはトレンドの先駆者であり、今その成果を享受しています。
収益が過去最高に達したほか、Appierの今期の粗利も過去最高の58億円(約11.8億台湾ドル)に達し、前年比38%となり、収益の前年比率を上回ります。
粗利率も56.1%に上昇し、前年同時期より4.8%増加しています。
これは、高い粗利製品の貢献と主要業務の粗利率が継続して上昇していることを反映しています。生成AI技術が後押しし、粗利率は増え続けるでしょう。
Appierが買収したフランスのAdCreative.aiとは
2021年に設立されたAdCreative.aiは、フランスのパリに本社を置く、AIを活用したクリエイティブ素材の生成プラットフォームです。
例えば、リップスティックの背景を変えたり、ハンバーガーの動画広告の背景を生成したり、操作可能な広告素材を生成したりといったことが可能です。

「実は、私たちも類似した技術を持っているが、AdCreative.aiほど細かくなく、動的なコンテンツには対応できない。AdCreative.aiによって、この分野をゼロから始める必要が無くなる。」と游直翰氏は話します。
また、AdCreative.aiとAppierの顧客層が異なる点も重要です。
AdCreative.aiはSnapchat、Pernod Ricard、Reckitt、BNP Paribas、Chopardなど世界中の有名なブランドも顧客に抱え、AI技術を通して広告をより速く、スマートかつ影響力のあるものにしています。
AIアプリケーションに属するAppier(エイピア)
AppierはAIにおける階層モデルでAIアプリケーションの層に属します。アプリケーション層で勝敗を分ける鍵は、データの壁、ドメイン知識、産業モデルです。

AIにおける階層モデルでは、基礎モデル/機械学習ライブラリ、ハードウェア層と続きます。
ハードウェアに関しては、台湾はもともと重要なサプライチェーンを担っていますが、それを除けば、台湾の多くのソフトウェア企業(SI企業を除く)もアプリケーション層になります。
東北アジア、アメリカやEMEAで力強く成長する
2025年度第2四半期において、Appierは各市場の収益も安定して成長しています。
収益の51%は、東北アジアのeコマース企業、アメリカやEMEAという既存の顧客からのもので、残りの49%は、アメリカとEMEAで新規の顧客が増加したことと新製品によるものです。
去年と比べると、北東アジアの収益は、為替変動の影響を除くと35%と大幅に増加しており、既存顧客の注文が安定しているほか、新規顧客の加入によっても成長が促されています。
アメリカとEMEAは第2四半期に顕著な成長をみせ、前年比48%となりました。
主な要因は欧米でゲーム業界に加え、eコマース、フードデリバリープラットフォーム、インタネットサービスプロバイダーなど新規分野の顧客が増えたことです。
「アメリカの新規顧客は自社の規模が大きく、そのためこのような収益の上昇を招いた。」と游直翰氏は指摘します。
AIスタートアップを買収して広告をカスタマイズ化
Appierは、これまでの経営理念を貫きつつ、社内チームへのAI技術の導入や新製品の開発を継続しています。
従業員1人当たりの生産能力を向上させるだけではなく、買収したAdCreative.aiを活用してクリエイティブ生成分野のAI能力を強化しています。
特にAIエージェント技術を用いた動画モデルでは、企業が事前に用意した広告を消費者に提供するのではなく、消費者ごとにカスタマイズ化されたオーディオ・ビジュアルコンテンツを生成することが可能です。
「かつては、広告を出してから人を見ていましたが、現在は人を見てから広告を出す時代になった。」と、CEOの游直翰氏は語ります。
これにより、ユーザーに表示される広告の関連性が非常に高まり、広告のコンバージョン率が20〜30%向上しています。
現在、韓国と日本のeコマースプラットフォームの消費者は、すでにAppierのAIが生成した動画コンテンツを見ることができます。
AI生成のコストは継続的に低下しており、AIによって広告制作の時に発生する広告主の撮影コストを大幅に削減できます。AIで生成したコンテンツの品質はテレビ広告にも劣りません。
「AIによって広告用の撮影時間を短縮し、数週間を2時間まで短くできる」と游直翰氏は述べます。
Appierは、さらなる拡大を続けながらAIとの連携を深め、各製品のAI技術を高めることで、将来の企業の業績向上を目指していきます。
「今が限界ではない。今後も大きな成長の余地がある。」と游直翰氏は話します。
引用元:https://www.bnext.com.tw/article/84186/appier-2025-concall-
